「雨なき日」その2「浮かぶ辞典」

本から花壇を守るため、本を振り払うコロボックル

バシィー!!
もの凄い音と、”バラバラー!””ドサドサドサ!”と言う音があたりを包んだ。本やエロ本(汗)は道路に、道端に、家の窓を割って部屋の中に・・・そうして花壇以外の色々なところに散らばっていった。中国語辞典も、他の本かまた別な物とまぎれてしまった。どこへいってしまったのだろう。

「あーっ!!岸辺さんの中国語辞典が!!」
空中へ散らばった本の中に辞典を見つけた園が叫んだ。
「大変だ!!オレ達の本が飛んで行っちまったぞ!!」
「早く探さないと!!」
本の持ち主達――特にエロ本の持ち主は(笑)大慌てで自分の本を探しに行った。
「どーすんだよ!!このおバカ!!せっかく運んでた本をぶっ飛ばすなんて!!」
「しょーがないだろーが!!花壇の花が危なかったんだからよー!!」
コロポックル達は口々に本を飛ばした仲間を責めていた。その時、彼らの耳に誰かの泣き声が聞こえてきた。そこには泣いている園と慰めているウェットティッシュの姿が・・・。
「えーーーーん!!(シャレじゃ無いけど:汗)せっかく見つけたと思ったのに、辞典がどこかに飛んでっちゃったよーーーー!!」
「あきらめちゃダメだよ。もう一度探しに行こう」

公園では自分の本を探す人たちで一杯だった。かなりの本が積まれていたのだろう、とにかくいろんな種類の本がある。中には普通の店では手に入らないマニア垂涎ものの本まであった。
「あっ!これは×××の写真集!もらいっ!」
「それは俺の本だぞ!返せよ!!」
「わーん、僕の『きかんしゃトー●ス』がないよー」

ウェットティッシュの担任から電話が掛かってきた。
一方こちらはウェットティッシュの家。父親の神様とウェットのティッシュの弟・ポケットティッシュが遊んでいる。
「坊、高い高い〜」
「バブー」
ビュッ、ビューン!
神様はポケットティッシュ(以下・坊)を上に向かって放り投げるようにして『高い高い』をする。これをすると坊はご機嫌になるが、妻とウェットティッシュにはしょっちゅう怒られる。
「あなたっ!坊はお手玉じゃありません!」

ジリジリジリジリ!
向こうから電話のベルの音がけたたましくなっている。
「おい、母さん、電話出てくれ!」
神様を怒鳴りつけるのをやめて、妻は電話に出た。
「はい、紙田(神様の苗字)ですけど」
「お忙しいところ申し訳ありません、私は××高校の紙田君の担任の何某と申します。そちらに紙田君来てませんか?」
「いいえ。来ておりませんが、うちの息子がどうかしましたの?」
「実は学校の忘れ物をお宅へ取りに戻ったきり、学校へ帰って来ないんです」
「何ですって!?」
「母さん、どうした?」
鳴呼…面倒な事になってしまったが、この先一体どうなるのか…!?

園とウェットティッシュの前に現れたコロボックルたち。

「こうしちゃおれん。ボク達も辞典を探そう」
ウェットティッシュが園を促した。するとその時、不意に誰かの声が…。
「あのー…お取り込み中、済みませんが…」
「え?誰?」
「声は聞こえるけど姿が見えないよ。一体どこにいるんだい?」
「ここですよ。足元」
2人が下を見ると、何と手の平サイズの子供がズラズラと…。

「なっ、何なんだ!!キミ達は!?」
「初めまして。オレ達は森の妖精コロポックルです。本当は人間に姿を見せちゃいけないんだけど、アンタ達はちょっと普通と掛け離れてるみたいなんで良いと思って・・・」
「どういう意味だ!(怒)」
「実は、この騒ぎの元を作ったのは…」
「こいつです!!」
コロポックル達はいっせいに本を飛ばしたコロポックルを指した。
「薄情モン!!オレ達ゃ仲間なんだから、この際連帯責任だろーが!!」
コロポックル達は今までの経緯をウェットティッシュ達に話した。それを聞いたウェットティッシュは呆れて憤慨したように言った。
「まったく要領が悪いったらありゃしない!!それじゃ姿を消しても人間様にバレバレだろーが!!ちったぁ頭を使えよ」
「もう良いわ。そんなに怒らないであげて。この子達だって悪気でやった訳じゃないんだから…」
園の優しい言葉にコロポックル達は感激した。
「ありがとう、お姉ちゃん。実はアンタの本を探すのに役に立つアイテムがあるんだ」
「え?ホント?」

『千里鼻』はあまりにも威力が強すぎる(汗)

園にそう言ったコロポックルは、懐から何やら付け鼻らしきものを取り出した。
「ジャジャーーーーン!!これぞコロポックル一族に伝わる秘密兵器『千里鼻』!!」
「あーっ!!それは一族の宝物じゃないか!!」
「大事な物を勝手に持ち出して来て!!長老様に言ってやろ!!」
「うるせえなあ。この際良いじゃないか」
「ところで、それはどう使うんだい?」
「よく聞いてくれた、面長のお兄ちゃん!(余計なお世話だ:ウ)この鼻を付けていれば、千里四方の匂いを嗅ぎ分ける事ができるんだ。お姉ちゃんの匂いを覚えて本の飛んで行った方向をたどれば見つけられるよ」
「よし、そんならオレに探させろ」
本を飛ばしたコロポックルは大張り切りで『千里鼻』を付けた…ら!!
「どひゃああああっっ!!」
町中の悪臭が鼻腔に飛び込んできた。どうもこの『千里鼻』威力が強過ぎるらしい(苦笑)。

バタッ。
『千里鼻』の強力な威力に青い服のコロボックルは倒れてしまった。他のコロボックル達はあきれ果てた様子で彼を見ていた。
「これを使うしかないか…むやみに使うと父ちゃんに怒られるんだけど…」
ウェットティッシュはぼそっとつぶやき、制服のポケットから何かを出した。短い鉛筆のような細い棒切れだった。
「それ、何?」
園が質問した。ウェットティッシュは神妙な面持ちでなにやら呪文を唱えた。
「ちちんぷいぷい、痛いの痛いの飛んでいけ!」
バヨーーーン!!

ものすごい音と共にウェットティッシュの手には長い杖が垂直に立っていた。彼はこう見えても神様の『息子』である。神様の力を受け継いでる。普段は自分の持っている力を制御するためにこの杖を小さくして持っているのだが…。
「上手く行くかどうか分からないけど…」

杖を出したウェットティッシュ

ウェットティッシュは公園一体に気を集中させた。
「園の中国語辞典よ、我がいる場所へ飛んで来い!!」
ウェットティッシュの力が杖の先から発動した。それを見て、園もコロポックル達も驚いた。
「凄ーい!!お兄ちゃんは魔法使いなの?」
「みたいなものだけど、オレは一応神の息子なんだ」
「だから紙筒みたいな顔してるんだね」
園とコロポックル達は大爆笑した。
「うる星!!顔の事は言うな!!」
するとその時、上空から何かが飛んで来た。
「良かった、岸部さんの中国語辞典…」

ドッシャーーーーン!!
辞典は戻ったが思わぬオマケが付いていた。変な中年のオヤジが辞典と一緒に落ちて来たのである。
「オッサン、何者だ!?」
「オドレらこそ何モンじゃい!?高そうな本を拾ったから、これから売りに行こうとしとったのに!!」
「ひどーい!!他人の本を売ろうとしてたの!?」
憤慨した園の言葉を聞いて、コロポックル達も同様に怒りを覚えた。

「なんて奴だ!他人の物を取るのは泥棒だぞ!!」
「いつも長老様が言ってるよな?悪を見つけたら正せって」
「よし!これからみんなであいつを懲らしめよう!!」
「おおーーーーっっ!!」
コロポックル達は再び隠れ帽子をかぶると、中年オヤジの服の中に潜り込んだ。
「何じゃ?何じゃ??体がムズムズするぞい!!」
オヤジは妙な感覚に身を捩じらせた。

コロボックルに体をくすぐられ、身をよじらせる親父。

「あはん、うふん、あはん、うふん…」
服の中でコロポックル達が擽りまくる為、オヤジが擽ったさのあまり体を捩じらせ妙な踊りをするをウェットティッシュと園は呆れ顔で見ていた。
「それ!擽ってやる!」
「お!腹が捩じれてきたな!」
ゴイーーーーン!!
オヤジはとうとう、公園の木にぶち当たり気絶してしまった。

「どうだ!まいったか!」
気絶した親父の中からコロボックルたちが出てきた。
「ちょっと、やりすぎな気もするけど…ま、いいか」
ウェットティッシュが園の辞典を拾おうとしたその時だった。再び、辞典が宙に浮いたのだ。だが、今度は誰もいなかった。
「?!」


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