「うわーん!ヘンリー様ぁぁー!!どちらに行かれていたのですかァァ!!」
突然、中から猪のように突進してくる青年。しかしヘンリーの爆裂拳によって10mほど飛んでいった。一同が青い顔をしていると、ヘンリーはにこやかに飛ばされた青年を紹介する。
「彼は『ラテン・リ・デラクール』。高位神官の1人で僕のパシリだよ。」
「ゲホッ、ゴホッ…!ヘンリー様、パシリとはあんまりじゃないですか!」
ラテンはむせながらヘンリーの所にやって来た。一同はラテンがやって来た反対の方向を見ると壁に人の形をした穴がくっきりとついていた…。
「ぱぱ〜」
奥から今度は桃色のドレスを着た緑色の髪の女の人とヘンリーそっくりの女の子が現れた。
「わぁ可愛い!いくつ?」
「7歳です…」
「え…それにしてはでかくない?」
「…」
「ど、どうしたの?」
さっきから時雨は風船猫・タマの方を見ていた。
「さっきからあなたのことを気にしているようです、時雨はあなたが気に入ったようで…」
ルカが微笑みながら説明をした。
「猫さん、あそぼー」
時雨はいきなりタマの尻尾をつかんだ。
「わああああ!!やめて、尻尾、触らないでー!」
タマは悲鳴を上げた。
ドカーーーン!!
背後からものすごい音が響いた。一同が振り向くとヘンリーの不死鳥・シフォンが壁を突き破って現れた。
「し、シフォン?!」
その様子をヘンリーはしれっとした表情で見ていた。
「シフォン、あまりウェスターニャを困らせないでくれないか…おいたが過ぎるぞ」
「??」
シフォンの足元を見ると一人の女性がシフォンの下敷きになっていた。
「…」
「彼女はウェスターニャ。ここの生き物の世話係をしている。どうも、シフォンとは相性が悪くてねぇ…」
「おい、助けなくていいのか?!」
「いつものことだから、あと20分すればシフォンの機嫌も良くなるよ…」
ヘンリーの言葉に残りのものは慌ててウェスターニャの救出に向かった。何とかシフォンをなだめ、ようやくウェスターニャは解放された。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ…ありがとうごぜえますだ!」
ウェスターニャは訛りのある言葉でお礼を述べた。
「うぃ〜、ヒック!!」
今度は反対側の方から、グデングデンに酔っ払った緑の衣服の青年が千鳥足でヘンリー達に近寄って来た。
「おいおい、ローゼン!試合やる前から出来上がって、どーするんだよ!!」
「ヘンリーちゃん、何してんの?もう議員の先生方お待ちかねだよ〜ん♪ヒック!!」
「ヘンリー。この人は…?」
「彼はローゼン・エヴァグリーンと言って、ボクの飲み友達の不老長寿の戦士さ」
「…するってえと、アンタ一体いくつなんだ?」
「んーと…オレ、何百歳になったかなあ?百歳を過ぎてから、とんと数えて無いからなあ…うぃ〜、ヒック!!」
空と鈴を除くケムゾウ達5人はローゼン…いやボーゼンとなっていた。変わってる!ここの連中は変わり過ぎだぜ…!!先程の危ない(汗)高位神官、空の大叔母に当たる空より年下の少女、世話している動物と闘争を繰り広げる飼育係と年齢不詳の不老長寿の戦士。確かに天界に住む者達は現世に住む者よりもかなり掛け離れている…(と言っても、ケムゾウ達も普通の目から見れば相当な変わり者の部類ではあるが:笑)。
「では、これより議員様方のところへご案内〜…ヒック!!」
一同はローゼンに案内されて、さらに奥へと進んだ。
「さぁ〜、ここが議員室だよ〜〜ん♪皆〜、びっくりするなよぉ〜〜」
ろれつの回らない状態でローゼンは議員室を紹介した。
(うわぁ…酒くせぇ…)
ケムゾウたちは思わず顔をしかめた。ラテンはローゼンに注意したが、ローゼンは聞く耳を持たない。
「ローゼン!お前、酒少し控えろよ!」
「ラテンよぉ、お前も酒飲んでその融通利かない性格何とかせーよぉ」
「何だとーー!!」
後ろではウェスターニャがシフォンと再び格闘していた。
「この、バカ鳥!焼き鳥にしてやるべ!」
ズシーン
「ぎゃあああああ」
シフォンはウェスターニャを足蹴にした。
「…」
その様子を見ていたケムゾウたちはなんだか不安になってきた
「さぁ、オープン!ヒック!ウゲ〜」
ギギギギギギギ〜
ローゼンは今にも戻しそうな表情で議員室の扉を開けた。