一行は天界にやってきた。
まず最初に目に入ったのは雲と同じ色の大理石の柱や薔薇のような花を咲かせる植木など。奥には下へ通じる階段。そして青い空。冬特有のどこか懐かしい風。しかし全く寒くは無かった。
「誰も居ないな。」
ケムゾウがどこか寂しげに言う。
「ここは禁苑(きんえん)と言って僕と僕の許可を得た者だけが来て良い場所だからね。さ、あの階段を下りれば城の中だよ。」
カツカツカツ…
ケムゾウたちはヘンリーと共に下に通じる階段に下りていった。階段の周りは真っ白な壁のみでそれ以外に何もない、しかも、音ひとつ聞こえない。階段を下りる足音だけが不気味に響いていた。
「ついたよ、これを開けば城の中だ。」
ヘンリーが目の前の扉を指差した。
「よう!おぬしら、早かったのう」
「はってむ爺!」
空がすっとんきょうな声を上げた。扉の前にはなんとどスケベ…魔法使いのはってむがいたのだ。
「何でお前がここにいるんだ!お前が許しをもらえる訳がないだろ!」
ケムマキが問い詰めようとしたその時、傍にいた神様(管理人註・「勝利の石を取り戻せ!」参照。なお、ここでは、管理人作の神様とヘンリーとは友人同士となっています)が苦虫をつぶした顔で立っていた。
「実はこれには訳があってな…」
ある犯人が女性を人質にして立てこもっていた。石川刑事は犯人に向かって叫んだ。
「犯人に告ぐ!お前は完全に包囲されている!無駄な抵抗をやめて、おとなしく人質を解放しろ!」
「うるせい!」
バキューン!犯人が威嚇射撃をしてきた。
「なにやら騒がしいのう、あっ!」
その様子を見ていたはってむは、警視庁の張ったロープを超えた。
「爺さん行ったらだめだ!」
人質の女性は何かに気付いた。
「もうちょっと…」
バキ!
「ぎゃああ!」
犯人に肘鉄を食らわせた人質の女性は犯人の手からピストルを奪った。
「どこみてんのよ!このドスケジジイ!」バキューン!
「痛ってえ!む?なんじゃこりゃああああ!」
人質の女性のスカートの中をのぞこうとしたはってむは女性に撃たれた…。
こうしてはってむはマサボエンジェルの手で天界へと運ばれた。
「と、まあこういうわけじゃ」
「のん気に言ってる場合ねえだろ!」
「はってむさん…初めて会った時から変わった人だと思っていたが、とうとう逝っちまったか…」
人志は思わず毒づいた。
「なんかいったか?戦士殿?」
「なんでもない!ヘンリー、どうする?」
人志はヘンリーに目配せをした。
「神様、その人は僕の知り合いだ。一緒に城に連れて行くよ」
ヘンリーの言葉にケムゾウたちはゲッという表情をした。このじじいを連れて行くとろくなことにならないぞ!と他のものは必死に目で訴えた。
「ヘンリー様、いいんですか?こいつは天界に来る予定はなかったんですが…」
「予想外の事だってあるさ。あの『バカちゃん』たちは気まぐれだからね。ちょうどいい、僕がこの人を生き返らせるように話し合ってみるよ。」
それはやめたほうがいいのでは…とヘンリーを除いた一同は皆そう思った。この爺を地上でのさばらせておくより、いっそのこと地獄に送ったほうがいいのではと。
「さあ、すごい魔法使いのおじいさん、一緒に行きましょう。この城の中は広いから迷うといけない。」
「さすが、ヘンリー様!話が分かる!」
ひきつり笑いをするケムゾウたちをよそにはってむは一同の中に交じった。
一同は城の中を歩いていた。
「いよいよ天界の議員達とやらに会える訳か」
「どんな連中だろう?」
ケムゾウと童馬の疑問に空が答えた。
「これだけは言えるよ。すっごく嫌な奴らさ…」
「…」
やがてヘンリーは豪勢な装飾の大きな扉の前で立ち止まった。どうやら、ここが議員室らしい。
「さあ、みんな。これからバカちゃん…いや、議員達を紹介するよ」
ヘンリーはそう言うと扉を開けて中に入った。一同も続いて中に入ったが、果たして天界の議員達とはどのような神々なのか?