「天空の王女に捧げる二重奏」その4「扉の向こうへ」

空に変装するケムゾウ。

その夜、ケムゾウと童馬は…。
「どうだ、芥川!」
「髪の毛の色が変わってないぞ。」
ケムゾウは空に変化する練習をしていた。ヘンリーたちを欺くために…。

「ええい!千手観音!」
「カタルシス・ミスト〜!」
タマや人志も交じって鬼ごっこの作戦を練っていた。
その様子を空たちは影で見守っていた。

「ああ…一生懸命やっているのにこんな事言って悪いけど、神様に勝てっこないわ…」
「…オレたちは中立な立場だ。ケムゾウ達を止める権利はない」
そう思いながら、空はとても不安だった。ヘンリーたちの部下はひとくせふたくせもある一筋縄でいかない連中ばかりだ。そんな彼らにどう立ち向かっていくのだろうか…。


ヘンリーと人志、再会。

4人があれこれと奮闘した後、ついに夜が開け翌日の朝となった。
午前7時半少し前、ケムゾウ達は例のマンションの屋上でヘンリーが来るのを待っていた。
「ケムゾウ、今日の勝負自身あるか?」
「分らんけど、準備は万端整えて来た。手裏剣、巻きびし、煙玉、匂い袋…」
「何だ?そりゃ」
「ふっふっふ、内緒だ」
ケムゾウと童馬が話していると、天界の扉が開きヘンリーが現れた。

「やあ、おはよう。みんなよく眠れたかな?」
「あ、神様…」
人志は皆の言う神の姿を見てビックリ!!
「ヘンリー!!キミはヘンリーじゃないか!!神様というのはキミだったのか!?」

「ああ!ヘンリー!何でここに?」
人志に引き続き、タマが声を上げた。2人に気が付いたヘンリーはにっこりと微笑んだ。
「お久しぶりです。こんなところで会えるとは奇遇だな。」
「人志さん、曾祖父さんと知り合い?」
空が不思議そうに聞いた。人志は空を見て誰かと似ているなと思ったのはこれだったのだ。

天界の扉が開いた…。

「さあ、ではみんなボクと一緒に天界に行こう。バカちゃん…いや、議員達との顔合わせやルールの説明もしなくちゃならないし」
「いよいよ未知なる領域に足を踏み入れる訳か…」
「どんな世界だろう…?」

バアン!!
扉が大きな音を立てて観音開きに開いた。
ギイイイイイ…
扉の向こうには白い地面と青空があった。それ以外のものはここからは見つけることは出来ない。

「あの…なんで地面が白いの?」
「地面でないよ、雲の上なんだ」
「お、俺、高所恐怖症なんだよ!お、落ちたらどうしよう!」
人志はそれを聞いたとたん、情けない声を上げた。そこにふみいれた途端に足を踏みはずし、墜落してしまうのでないかと思った。

「大丈夫、落ちやしないよ!」
タマが人志の背中を押した。もっともタマは風船猫なので、落ちても飛ぶことが出来るのだが…。
「あ、ああ!!押すな!!!」
「人志さん、行きますよ!」
ゴオオオオ〜…バン!!
扉は派手な音を立てて閉まり、姿を消した。


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