「だいたい話たいことはわかるよ。でも、それには天界のバカちゃんたちと話もつけなきゃいけない。もし、君達が僕の3人のお手伝いさんたちにゲームで勝てたら皆に納得してもらう。君達は空より頭が良いし強いから君達の能力をみたら天界のバカちゃんたちも納得してくれるだろうし、いざとなったら僕が無理矢理納得させる。ゲームのルールは君達が決めてくれ。」
ヘンリーは『バカちゃん』の部分を強調して言った。2人は『バカちゃん』って誰だろうと一瞬思ったが、ケムゾウはこう切り出した。
「うん、わかった。じゃあ…。こういうのはそうですか?僕も味方をつける。3人ね。それで神様と鬼ごっこだ。俺が鬼。神様は逃げて。そこで障害物競走みたいに神様のお手伝いさんがいてくれればいい。」
「うん、わかった。じゃあ明日朝7時にここで。」
鬼ごっこの打ち合わせをした後、ヘンリーは再び天界に戻っていった。そこに残ったケムゾウと童馬は思案していた。
「さて、こちらはあと一人味方をつけるだけだ。」
「どうするんだよ、心当たりはあるのか?」
「いるさ。」
ケムゾウはにやりと笑った。
「ぶえっくしょい!」
そのころ、間 人志は自宅で大きなくしゃみをしていた。
「ひとしさん、風邪ですか?」
怪訝そうな顔で天使・エルが聞いた。
「あああ、誰かが俺の噂をしているようだ…。」
冬休みでごろごろしていた人志は動くのも億劫そうであった。
「ひとし、寝転がっていないで外へ出たらどうだ?そうだな、ジョギングはどうだ?」
悪魔・ルビが声をかけた。
「冗談じゃねぇ…せっかくの冬休みなのに、それにただでさえ寒いのに…。」
ビリリリリリ!
突然、人志の腕時計がなった。人志は慌てて時計の竜頭を押した。
「はい?」
少し間をおいて、時計から声が聞こえてきた。
「人志さん、お久しぶりです。ケムマキです。」
「あ、ああ。ケムマキ君か。こないだチャイルドXに乗っていた子?」
「人志さん、折り入って話があるんですが…」
「話ってなんだよ」
「ここではまずいから今から俺のいう場所に来て欲しいんですが…」
内心、人志は行きたくないなあと思った。だが、ケムゾウの声からして大事な話らしい。
「分かった…じゃあ、今、そっちに向かうから」
「エル、ルビ、ちょっと出かけるぞ」
「ひとしさん、事件ですか?」
「それが分からないんだが…The death,be reborn!」
(管理人註・ケムゾウたちは天地の戦士=人志の正体を知りません)
ここは鈴の部屋。鈴の御守り『占蓮玉(せんれんぎょく)』から不思議な波動が流れ出てきた。
「あら?何かの兆し?でもなんの…」
鈴は占蓮玉を覗き込んだ。
ヴォン、ヴォン、ヴォン…
「4つの光が見える…これはどういうことかしら?」
占蓮玉の光のうち1つには緑色の髪の少年の顔が映り、後の2つにはケムゾウと童馬の顔が映った。
「これは……占蓮玉、この2人は今どうしているの?」
鈴の問い掛けに、占蓮玉はケムゾウと童馬の今の様子を映し出した。
マンションの屋上で2人は、何やら話し合っていた。
「…それにしても、神様の話聞いて驚いたな。天界では物事を多数決で決めるような制度になってたなんて」
「今の空ちゃん達の現状は全てが神様の意思じゃ無い、半分は天界の議員とか言う連中の意思が働いてたんだな」
「少なくとも、空ちゃん達をこの世界で「権力者」として祀り立てているのは議員の意思だぜ」
「でも良かった、神様がオレ達の考えを手っ取り早く理解してくれて。神様の言葉がもう少し遅かったら、オレ議員とやらに言うべき事を神様に言うところだった」
「『アンタのしている事は、この世界の人間…真の権力者を無視した行為だ』ってか?」
「芥川。お前、よく分ったな」
「当然さ。誰だって思うだろうから」
「でも、オレ達がその為に神様と対決するって事は空ちゃんには内緒だぜ」
「分ってるよ。彼女に恩を着せたく無いんだろ?」
「うん。それに勝負がどうなるか、まだ分らないし…いや!絶対勝ってみせる!」
占蓮玉を覗いていた鈴は、顔が青ざめた。
「あの子達、神様に挑戦する気なのね!無謀だわ!早く、空に知らせないと!!」
それからしばらくして、人志=天地の戦士がケムゾウ達の元にやって来た。
「やあ、久しぶり」
「お久しぶりです。人志さん」
童馬とケムゾウ、人志は「ヒーロー、揃い踏み?」(作品集・1参照)の時以来の再会を果たした。
「話ってなに?」
「ああ、その前にもう一人居た方がいいな。4人必要なんだろ?」
童馬がケムゾウに話を振った。
「もう一人要るの?なら、俺が呼ぼうか…。知っていると思うけど、こないだあった猫レンジャー…いや猫型宇宙人のタマなんかどうだ?」
人志がこう切り出した。
「人志さん、いいの?今、呼んでも大丈夫?」
「ああ、今、呼ぼうか?」
人志は再び、時計の竜頭を押した。
「もしもし、人志だけど…。ああ、大丈夫?すぐに来れる?」
バババババ…ビュン!!
人志が言い終わるか終わらないうちに、目の前に風船猫・タマが現れた。
「人志くん、なに?面白いことでもあるの?」
タマは相変わらずだった。
「これで4人そろったな。本題に入ろうか。」
ケムゾウが話し始めた。