「ツルッパゲの大男め!!空ちゃんを返せ!!」
チャイルドXは巨大まさりん目掛けてパンチを繰り出した(操縦しているのは当然ケムゾウである)。
「むむっ!!何の!!」
巨大まさりんはそのパンチを片腕で軽くガードした。
ガシーーーーン!!
「きゃああああっっ!!」
その衝撃で、空が巨大まさりんの肩から落ちてしまった。
「危ない!!」
ケムゾウ、いやチャイルドXは慌てて空を受け止めた。
「空ちゃん、大丈夫か?」
ケムゾウの言葉に、空は息も荒げに物凄い形相で睨み付けて言った。
「大丈夫な訳無いだろ!!びっくりするだろーが!!このバカ!!」
せっかく助けてやったというのに、この言い方……!!
さすがのケムゾウも、これには少々ムカついた。
「なっ!!オ、オレはキミを助けてやったんだぞ!?それなのにバカとは何だ!!」
こんな感情の苛立ちは空と出会って以来初めての事だが、ケムゾウは本気で心配していただけに空のあまりの態度が許せなかった。
「頼みもしないのに余計な事をして!!このバカ!!」
空もケムゾウに悪意が無い事は分っていたが、何しろ時間が無くて焦っていた為、この突然の乱入者が許せなかった。
「何でも1人でできるような事言いやがって!!年上だからって威張ってんじゃねーよ!!バカ!!」
「何も分って無いくせに偉そーな事言うな!!バカ!!」
「バカはそっちだ!!」
「そっちこそバカだ!!」
「バカバカバカ!!」
「バカバカバカバカ!!!」
「いい加減にしろ!!2人とも」
童馬の一喝で2人は我に返った。
「そうだ、こんな事してる場合じゃ無かった。ケムゾウごめん、ついイライラして。実は…」
ケムマキたちは下のほうを見下ろした。下にはおびただしい数のカラスが気絶していた。
「どういうことだ?説明してくれないか?」
「…そうか。空ちゃんには、もう恋人がいるんだね…」
気のせいか、ケムゾウの表情が何だか暗い。
「どうしたの?ケムゾウ」
「いやっ、何でも無い。空ちゃん、カラスという鳥は光るものを集める習性があるんだ。貴金属を持って外へ出る時には気を付けなきゃ…」
「うん…」
さすが忍者のケムマキケムゾウ。動植物の生態についての知識は相当なものである。
「それじゃオレ達も手伝うから、そのカーリングを持ったカラスを探そう」
「カーネリアンなんだけど…」
宝石についての知識はかなり疎いかもしれない。
その頃、まさりんの攻撃から何とか逃れていた1羽のカラスが、綺麗な冬の空の下を飛んでいた。
しかしその時、カラスは突然苦しそうに「かぁー!」と一声鳴いた。すると、カラスのくちばしから朱色の石のペンダントが零れ落ちた。
カーネリアンを持ったカラスを探す為、ケムゾウと童馬はチャイルドXから降りて来た。下で待っていた空だったが、2人が側に来ると途端に大きなくしゃみをした。
「大丈夫かい?空ちゃん…何だ、びしょ濡れじゃないか。どうしたんだい?」
「さっき、まさりんに海の水ぶっ掛けられて…」
「これ貸すから着なよ」
ケムゾウは自分の上着を脱いで、空に渡した。
「サイズが合わないよ」
「肩に掛ければ良いさ」
空はケムゾウの上着を肩に掛け、袖を首のところで結んだ。黒いケープのように見えて、なかなか可愛らしい。
「ありがとう、ケムゾウ」
「良いよ、これぐらい。それより早くカーネーションを探そう」
「カーネリアンだって…」