ちょうどその頃、ケムマキケムゾウは芥川童馬の自宅に遊びに来ていた。2人は室内で談笑していたが、話題が天野空の事になって来るとケムゾウの顔が急に暗くなり始めた。
「どうした?ケムゾウ」
「芥川。お前、空ちゃんの事どう思う?」
「ん?ああ、可愛いと思うよ。本命はエリカだけど」
「そうじゃない!!オレが言いたいのは、空ちゃんみたいな女の子がこの世界で警護を受ける為に、大人顔負けの権力者として据え置かれている異様な現実の事だよ」
「そう言えば連中、小学生なのに大層な役職に就いてるもんな。心太はFBI幹部、上狼(しゃおらん)は特殊軍隊のサバイバル教官、翼と祐は発電所の所長、そして空は警視総監…」
話だけを聞いていると、空達がとんでも無いウルトラ小学生に聞こえるが、実はこれには訳があるのである。
空とその6人の仲間達は、元々異世界の住人。その世界の神であるヘンリーを警護し補佐する神官や巫女としての役目を持つ為7人共が不思議な力を持っている。
彼らが生まれて間も無い頃、封印されていた魔王の配下が復活してしまい天界に大戦争が勃発してしまった。その為、空達7人は難を逃れるべくこの世界に亡命して来た。
普段は普通の小学生として学校へ通っているが、登校以外の大半はヘンリーの配下の息の掛かったこの世界の権力者達の警護を受ける為、上狼のテレポート能力により警戒厳重な施設の中へ行き来している。
当然この事は世間一般には秘密であるが…。
「仕方が無いさ。人から警護を受けるには、それ相応のご身分で無いと…」
「型にはまりすぎてるよ。男連中は結構楽しみながらやってるだろうけど、空ちゃんは女の子だぞ。大の大人の男の部下を従えて厳つい役職に付いている、それが12歳の女の子の自然な姿と言えるかい?」
「そりゃ男連中にも言える事だけど…」
「オレには空ちゃんの可愛い顔にゴツイ髭を生やすような行為にしか受け取れないね。空ちゃん達は亡命者なんだぜ。ヘタな小細工無しに普通の子供と同じように保護してやれば良いのに…」
ケムゾウとしては、空にはこの世界で普通の少女として暮らして欲しいのであろう。確かに空の如き年端の行かぬ少女が国家権力の最高責任者として多くの大人達の上に君臨している姿を思うと、異様と言うより壮絶な感じがする。
「お前、あの子の事になると妙にムキになるが、彼女に特別な思いでもあるのか?」
童馬の言葉にケムゾウは少し動揺の色を見せたが、
「バカ言え。オレは空ちゃんの良き親友としてそう思うだけだ」
すると、その時…。
ズシーーーーンッッ!!グラグラ……!!
突如として物凄い地響きが轟いた。
「なっ、何だ!?」
「研究所の裏の方だ!行ってみよう!!」
外に出た2人が研究所の裏の森で見たものは、何と黒いタイツ姿の加トちゃん頭の大巨人!!
「何だ!?あのダイダラボッチは!?」
「日本列島を食うつもりか!?」
そして2人は巨人の肩に息も絶え絶えな様子でしがみ付いている少女の姿を見つけた。
「あれは…空ちゃん!!」
「何で、あの化け物の肩に!?」
「わかった!!あの怪物はワルワル団の怪人だ!!きっと空ちゃんを人質にしてオレ達に降伏をせまる気なんだ!!」
「そんな事させてたまるか!!ケムゾウ、久々にチャイルドXの出動だぜ!!」
「OK!!今日は遊園地が休みで良かったな」
「おい!!降りる時はそっと降りてくれよ!!危うく落っこちるところじゃないか!!」
空は息も荒く巨大まさりんに言った。
「ははははは!!済まぬでござる。では、これよりこのカラスどもを集めますかな」
すると、そこへ現れたのは1体の巨大ロボットだった。
「待てーーーーっっ!!ワルワル団の怪物め!!」
「このチャイルドX(「ヒーロー、揃い踏み?!」をご参照ください)が相手になるぜ!!」
「もう大丈夫だ!!すぐ助けてあげるからね」
「その声はケムゾウ!!待って!!この人は!!」