「異世界の不思議な友達」その10「Fivecats' Soldiers」

血なまぐさい空気が漂う暗闇。

「な、なんだこの生臭いにおいは…」
「いや、これは血のにおいですね…」
どう表現して良いのか分からない、嫌なにおいが辺りに立ち込めた。暗闇の中で生暖かいどんよりとした空気が漂っていた。
皆はその臭いに顔をしかめた。
「どうでもいいがなんか魚くさいのぉ。」
「今の会話聞いてたんですか…魔術師のおじいさん」
はってむは相変わらずだった。

ナイトメアの目…?

暗闇の中でナイトメアの目が弱弱しく光っている。それは星のようにも見えたが、不気味な光だった。
「来たぁ…来たぞォ…もうすぐ『神』の血と肉がわれわれのものになるのだ…ぬ?!」

ナイトメアがヘンリーたちの気配をたどって彼らを見つけたと確信したその時だった。ヘンリーたちの姿は何処にもなかったのだ。その代わり、ヘンリーの愛用の剣が不思議なオーラを放っていた。
「は、はかったな!あやつ!一体何処へ消えた!」


…?

ヘンリーの剣からはものすごい冷気が出ている。これが煙幕と結界の役割をして彼らをガードしていた。
「なんだろう。この冷気。心地良い冷気だね。」
「むぅ、わしの腰痛も治ってきたわい!ウキウキv」
「あの赤いものはもしや敵の目でしょうか?」
「そうかもしれないね。でも僕らもこのままでは身動きが出来ない。」
「召還でシフォンか誰か呼べばいいじゃん。」
「おぉ!人志さんいいアイデア!」

人志は腕時計をみんなの前に突き出した。
「俺がナイトメア達に対抗できる奴らを今から呼び寄せる!」
「猫型宇宙人、風船猫・タマ、透明猫・レス、雷猫・サンダー、炎猫・フレイヤ、雪猫・ケイン、至急、妖精界の魔の森に集合せよ!」

猫型宇宙人、只今参上!

ヘンリーの剣の結界が波打つように振動し始めた。
ヴヴヴヴヴヴヴ…
「!」
地面から光が突き抜け、彼らは現れた。
「猫型宇宙人、只今参上!」

魔の森に集合した猫型宇宙人は、魔の森の邪悪な気配に圧倒されていた。
「何なの…この空気、気が変になりそうだ。」
風船猫・タマは思い切り顔をしかめた。
「人志さんに呼ばれたのはこのあたりでしょうか。」
炎猫・フレイヤは透明猫・レスに聞いた。
「うむ…」

自分のシンボルストーンを掲げたレスは人志たちの気配を探っていた。
「あのあたりだ…わしだ、透明猫・レスだ、何があったんだ?」
人志達のいる方向に向かってレスが話しかけたその時だった。

ナイトメアに取り囲まれた猫型宇宙人。

ズオオオオオッ!
「!」 ナイトメア達は猫型宇宙人を取り囲んだ。黒い影は目を光らせていた。
「ものすごい魔力があると思ったら、お前らだったのか…やっちまえ!」

グオオオッ!
ナイトメアの黒い影はものすごい速さで猫型宇宙人の周りを回っていた。
「はははははは!どれが本物か分かるまい!」

「ああっ!」
ケムケムはその様子を見て、冷気の結界から飛び出そうとしていた。
「まて!」
「あのままでは!」
「彼らを信じよう!」
ヘンリーは真っ直ぐなまなざしで向こうを見つめていた。

グオングオン…
透明猫・レスの手に赤みが差し、それは暗闇を差した。
「出でよ、シンボルストーン!闇の中の真実を示せ!」
真っ赤な光が発射された両手をレスは地面に押し当てた。
「ビッグ・シールド!」
ドオオオーーーン!
猫型宇宙人の周りには紅の結界が張られた。


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