「異世界の不思議な友達」その5「ケシゴム君は何処行った」

君は何処から来たの?

「ところで、君はどんな所から来たんだい?」
「この世界のように変な息を出して猛スピードで走る鉄の生き物はいませんし、ふつう僕の世界ではあなた方のような薄物を着る人はいません。なんか魔物が居るのは同じですけど・・・。」
「ちょっと待て!本当は俺達の世界では『魔物』なんてものは存在しない筈なんだ。最近ちょっと妙なことがあってね。」

そこにいた全員が黙り込んだ。口火を切ったのはヘンリーだった。
「ねぇ、僕一週間この世界に居なきゃいけないんでしょ?宿はどこですか?」
ヘンリー以外の全員が笑いだした。たしかに宿はこの世界にもあるが、ふつうホテルと言うものだから。


人志がヘンリーにこう提案した。
「なあ、ヘンリー、ホテルだとお金がかかるだろう。誰かのうちに泊めてもらえばいいじゃない。」
呑気な声でこういうと、また、エルの声が聞こえた。

「ひとしさん!軽はずみなことを!ヘンリーのことはどうやって説明すればいいんですか?!」
エルの声に人志は顔をすくめた。
「俺にいい考えがある!皆、耳を貸せ!」


江地博士と助手ロボ・ドッカンブラザーズ

ここは人志の近所である、江地研究所。発明家である江地 孫太郎と彼の助手ロボ・ドッカンブラザーズが住む。

「江地博士、1週間でいいんです…彼を泊めてくれないでしょうか」
「わしは構わんが…あいている部屋はこいつらの隣だからうるさいぞ?それでもいいなら…」
「ありがとうございます」

はってむさん、何故ここに?

「はってむさん、何故、あんたがここに居るんだ?」
江地博士の家の空き部屋を借りることにしたヘンリーだったが、いつの間にか横にははってむがいた。

「戦士殿、来日して1週間もたたないうちにお金がなくなってしまって、泊まるところがなくて困っていたのよ」
(あんたは野宿しても平気そうだが…)
人志は心の中で毒づいたが、ヘンリーは笑顔でこたえた。
「大勢の方が楽しいですよ、人志さんも一緒に泊まりましょう」
「えっ?俺も?!」
人志は突然のことに戸惑ったが、結局泊まることになった。


「ところで、ケシゴム君は何処行ったんだ?さっきから姿が見当たらないけど…」
人志が辺りを見回しながら、ヘンリーに聞いた。
「何でも、『調べることがあるから』ってさっき、出て行きましたが…」
「ふうん、俺たちに出来ることがあれば協力するのに…」


『のど自慢』を見るはってむ。こ、こいつは?!

はってむは勝手にテレビを見ていた。
テレビでは「のど自慢」が放送されてた。
「はってむさん、消しゴム君知りませんか…って、なに呑気にテレビ見てるんですか!」

「あっ!」
人志はTVを見て思わず仁王立ちした。
「大変です!箱の中に人が居ます!魔法の箱です!」
人志はヘンリーの言葉にずっこけた。
「ヘンリー!これはテレビといって、遠くのものを映す機械なんだ…って…なんでアウン軍曹が『のど自慢』に出演してるんだよ!!」

カーン!

カーン!
アウンは鐘一つだった。鐘と同時にアウンたちはコケた。
「はっはっはコケたコケた」
はってむはカラカラと腹を抱えて笑っていた。

感涙にむせぶアウン軍曹。なんだ、こいつは…(汗)

「いやあ残念!がんばったのにね」
司会者がアウン軍曹の方に駆け寄り、慰めるように言った。
「私はこの番組が大好きでいつも楽しみにみています。今回出させて頂いて非常に光栄に思っております。」
人志は呆気に取られた。出られてよほどうれしかったのか…アウン軍曹はいつもと違い、謙虚だった。

「ゲストのゴールでん太さん、いかがです?」
「鐘ひとつで残念だったね、でも番組出れてよかったじゃん!」
ゴールでん太という太った青年は明るく声を掛けた。
「ありがとうございます。」
アウン軍曹は涙を拭きながら、深々とお辞儀をした。

ケシゴム君、どうしたの?

「みんな、テレビなんか見てる場合じゃ無いよ!」
一同がテレビのアウン軍曹に見入っていると、突然消しゴムくんが部屋の中に飛び込んで来た。
「どうしたんだい?消しゴムくん」
「ヘンリーさんをこの世界に呼んだのが誰だか解かったよ!」

その4に戻る その6に続く