ケムマキ兄弟が会場に向かっている頃、筆記試験の通過者が発表されようとしていた。係の神様が参加者達の前に現れた。
「発表します…」
神様は通過者の名を読み上げた。
「1番、一条明さん。2番、立花夕樹さん…」
先程、人志が出会った2人の名が読み上げられた。
「3番、葵アオハルさん」
「やったぜ!オレはいつでも青春さ!!」
『あ、あの人も参加していたのか…!!』
意外な人物の登場に、大いに驚く人志であった(笑)。
「4番、太宰治虫さん、5番、小池…」
通過者の名前が次々に読み上げられていった。
「…8番、銅鑼木由良男さん」
「やった!合格したざますよ!坊ちゃん!!」
虚弱体質のように痩せ細った紳士が1人で喜んでいた。
『誰に話してんだよ、オッサン…(汗)』
人志はジト目で紳士を見つめたが、そうしているうちに通過者の最後の1人の名が読み上げられた。
「9番、間人志さん」
最後に読み上げられたのは人志の名であった。
「やったぜ!ひとし!!」
「やりましたね!!」
人志の筆記試験合格に、喜びの歓声を上げるエルとルビだった。
こちらは、ミリオネア会場の観客席。
そこに駆け付けたケムマキ兄弟は、観客席に座っている芥川童馬と国生明菜の姿を見つけた。
「芥川、国生。お前達も来てたのか」
「ああ。ワルワル団が、この会場を占領してるらしいからな。それに、このクイズに太宰の先公が挑戦するらしいから、ついでに太宰を冷やかしてやろうと思ってな。へっへっへ・・・」
「奇遇だなあ。小池の先公もミリオネアに出るんだとさ。オレも総理の応援とワルワル団撃滅のついでに、小池の負けっぷりを見てやろうと思ってな」
「1000万円が取れなかったら笑ってやろうぜ」
「へっへっへ…」
「ひっひっひ…」
総理がミリオネアに出ることは全国にあっという間に広まっていた。マスコミは著名人らにマイクを向けていた。
「●江さん、総理大臣が『郵政民営化』を賭けて『ミリオネア』に出ることをどう思われますか?」
「あの人のすることは予想がつきませんからね。これからの政策にむけて起爆剤となることを祈っています。」
最近、宇宙旅行にも手を出し始めたネット会社の社長が真顔で話していた。続いて、先日、プロレスデビューをしたあの人がTVに映し出された。
「すいません、H●さん。総理が『ミリオネア』に出られることについては…」
「郵政民営化、フォ〜!」
サングラスにレザーのファッションで身を包んだ芸人は奇声を上げ、腰を激しく振ってポーズを決めた。
「…ありがとうございました…」
「あなたの人生を変えるかもしれない、クイズ$ミリオネア!」
司会者の声と共に総理+解答者9人の人生、いや、日本の未来をかけた戦いが始まった。
「皆さんもご存知のようにこの会場はワルワル団に乗っ取られました。そして、今、日本の未来をかけたクイズ合戦が始まろうとしています。あなたの人生はおろか日本の将来が変わるかもしれません!ワルワル団の野望を力をあわせて砕くのです!」
人志は彼の流暢な台詞を聞いて思った。日本を動かすのは総理大臣でなく、この司会者ではなかろうかと。彼の一言が元で大事になっているはずなのに、司会者は動揺を微塵も見せず、しゃべりきった。
「べらべらしゃべりすぎた…」
「そこのル●ンV世、私語を慎みなさい!」
司会者はすぐ後ろに座っていたバレンタインに向かって、檄を飛ばした。
「…」
司会者のあまりの気迫にバレンタインは黙り込んでしまった。
「今日の解答者は次の10人です!最初の解答者はこのひとだっ!」
「やあ!オレ!アオハル!オレはいつでも青春さ!」
「オホン!それでは、葵さん、問題です。第一問、節分のときに、家に来た鬼に投げるものと言えば?」
「サジ!」
「落ち着いてください。この問題は四択です。」
「あっ!いっけねえ!」
「人志くん、彼は大丈夫なのかね?」
早速フライングをしてしまったアオハルを見て、総理は不安そうに人志に聞いた。
「あ、あの、あの人はいつもあんな調子なので…」
人志は心の中で思った。最初の問題に入ったばかりなのに『サジ』投げてどうするんだよと…(汗)
「A.お金、B.餅、C.豆、D.米…」
「何だ簡単じゃん…子供でも分かるよ」
童馬とケムゾウは拍子抜けしたような表情をした。
「餅!」
「ええええええ!嘘だろ!?」
「そんなことも知らねえのかよ!?」
童馬とケムゾウ、その他のオーディエンス(観客)はアオハルの答えに顔面蒼白となった。
「ほんとにそれでいいんですか?なんならライフライン使ってもいいんですよ。」
「オフェンス…あっ、いけねえ!オーディエンスお願いします!」
アオハルは少しも悪びれず、オーディエンスを選んだ。サッカーは大得意の彼だが、おつむの方はさっぱりのようである。
ザン!オーディエンスのほとんどが豆を選んだ。
「C.の豆でお願いします!」
「Cの豆、ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー!」
「正解!」
人志はひやひやしながら彼の様子を見ていた。心なしか総理や司会者、客席の一同の顔が青ざめている。
(あああ…心臓に悪いぜ、まったく…何故、この人が選ばれたんだろう…)
先行き不安なスタートの総理とミリオネアチーム。どうなる日本?!