「うわあああ!総理!」
「どうした?タマ」
突然、タマがすっとんきょうな声を上げた。人志がタマが指差す方向を見ると、何者かがバイクで車を追っていた。
「もっとスピード出してよ!後ろからバイクが追いかけてくるよ!」
「あいつもワルワル団なのか?」
「我が名は、座敷わらしオール!お主らを会場へは行かさん!」
ブオオオオオ…
会場へ向かう総理達の車を、ワルワル団の座敷わらしオールが追って来た。
「くそーっ!あきらめの悪い連中だ!!」
「運転手さん、もっとスピード出して!!」
「ははははは!!どんなに逃げても無駄だ!!郵政の民営化など成立させん!!小☆総理、覚悟しろ!!」
オールのバイクは、ぐんぐんと★泉総理の車に追いついて来る。危うし――
パーーーーン!!
いきなりオールのバイクのタイヤがパンクした。勢い余って転倒するオールのバイクを見て、総理達一同は突然の事態に驚愕した。
「何だ!?何が起きたんだ!?」
「とにかく今のうちに会場へ急ごう!!」
総理達の車は会場に向かってスピードを上げた。
総理の車が会場の建物の前で止まると、皆は即座に車から降りて建物内に入り、解答者候補の集まっている控え室へと向かった。
「大丈夫かなあ…」
今いち自信の無さそうな人志に、ルビが発破を掛けた。
「大丈夫だ!自信を持て、ひとし!今のお前なら1000万当てるのも夢じゃない!お前は、あの山のような問題集をすっかり解いたじゃないか!!」
「本当に。私達もお世話をした甲斐があったというものです…(感涙)」
「今回は何もしてもらってねーよ!!」
見当違いの涙を流すエルに、思わず叫ぶ人志であった(笑)。
「キミ。誰に話しているんだね?」
「い、いいえ、別に…(汗)」
人志の妙な様子に突っ込みを入れてきた総理だが、人志は何とか誤魔化した。
人志達が控え室に入ると、数多くの候補者達が待機していた。その中には、どこから見ても女装の似合いそうに無い典型的な男性的風貌の好男子な少年と、茶色い髪をしたエキゾチックな混血と思われる美少年がいた。
「あの〜、筆記試験の控え室はこっちですか?」
人志はおずおずと傍にいた2人に声をかけた。
「君も『ミリオネア』に出るの?TV局は広いから探すのに苦労しただろう。ああ、俺は一条明。こっちの茶髪のは立花夕樹。」
明は人志に気さくに声をかけてきた。
「お、俺は間 人志…よろしく。俺、TVは初めてなんで…どうも緊張しちゃって…君たちは余裕そうだね…」
「とんでもない、俺はともかく、明はTVは慣れっこだからな。場数を踏んでいる奴は違うぜ、なぁ、明?」
夕樹が明に話題を振った。
「どういうこと?TVにでてるの?」
「ま、まあな」
一方、こちらは路上に転倒したオール。よく見てみると、路上に巻きびしがばら撒いてあった。
「むむむっ!これは、まさか…!?」
「その通りだ!座敷わらしオール!!」
オールが声のした方を振り返ると、そこにいたのは忍び装束の2人の少年――
言わずと知れた、我らがケムマキケムゾウ・ケムシ兄弟であった。
「オレ達はテレビを見て、お前達ワルワル団が総理に危害を加えないようミリオネアの会場へ向かう道筋で待機してたのさ」
「オレ達が来たからには、もうお前達の好き勝手にはさせないぞ!!」
「うーむ!何を小癪な…!!」
ミリオネアの会場では筆記試験を控える人志達。かたや道路上では戦いを始めようとしているケムマキ兄弟と座敷わらしオール。一体、どうなるのか!?
「総理、これはこれは…」
筆記試験の会場をモニターの画面で見ていたバレンタインが、遅れてやってきた総理に向かって不敵な笑みを浮かべた。
「あんたの考えていることは大体想像つく…私を妨害して会場に来させないつもりだったんだろが…」
総理はバレンタインを睨みつけた後、モニターに映った筆記試験会場を見つめた。
「総理、あんたも無謀な人だ…どこの馬の骨とも分からない一般人に賭けるつもりですか?もし、誰も1000万円が取れなかったら責任問題になりかねませんな…」
「…」
バレンタインは総理を動揺させようと、いろいろと話しかけるが総理は表情を変えなかった。
「善良な一般市民とはいえ、元を正せば一人の人間、あやまちだって犯すと思って、試験会場に我が配下を仕向けておいた。」
「…」
バレンタインはモニターの方を指差した。試験会場になんとワルワルコマンダーとフラワー児童が待ち構えていた。
「いいか!試験は正統に執り行なう。もし一人が不正行為をした場合…」
「シャアアアアアアアア!」
「試験時間は50分です。なお、成績上位9名が出場の権利を得られます…」
人志らは緊迫した空気の中、試験会場にいた。背後にはワルワルコマンダーらが監視している。総理たちのやり取りをモニターで見ていた人志は悪の組織の奴等に『不正行為』云々をいう資格があるだろうか…と一瞬、思った。だが、そんなことを考えている暇はなかった。
試験開始のベルが鳴った。
「はじめ!」