
ここは「ミリオネア」の局の編集室。
「動くな!ワルワル団だ!局の責任者は誰だ!」
ワルワル団の戦闘員が一気に押しかけ、社員たちに銃を向けた。
「私が局長だが、何が望みだ?」
突然の事態に驚いた局長が前に現れた。
「郵政反対を行うよう、オンエアするのだ!ただし警察には通報するな!もし、通報すれば会場の奴らの命はない!」
「なんだと!?」
「待て!住谷君!わかった、言う通りにする、まずどうすればいい…?」
息巻く社員を諭し、局長は静かに尋ねた。
「ワルワル…」
戦闘員は局長らに銃を向けたまま、誰かに声をかけた。背後から黒い影が現れた。頭は筆のような金髪、そして服はル●ン三世のような真っ赤なスーツを身にまとっていた。
「私はワルワル団人事部長・バレンタインだ…私をこの『ミリオネア』に出してもらいたい…」
「はぁ?」
局長と社員は目が点になった。

ついに、バレンタインがTVに登場した!バレンタインは赤いワインの入ったグラスを揺らしながら、現れた。
「この国の総理、及び、その配下に告ぐ!今すぐ郵政法案を廃止せよ!さもないと、このテレビ局全員の命はない!俺の手前のジュラルミンケースには爆弾が入っているのだ!」
ギギギギ…
バレンタインはおもむろにジュラルミンケースを開けた。中には巨大な時限爆弾が不気味な音を立てていた。
カチカチカチカチ…
ここは首相官邸。バレンタインがクイズ番組の会場を乗っ取ったニュース速報がTVで映し出されていた。
「ははは、総理!私の要求を受け入れなかったらどうなるか分かっていますかな…」
「くっ…!」
「総理!」
その様子をTVで見ていた総理らは緊張の面持ちで立ち尽くしていた。
「ちょっと待った!」
「?!」
背後から司会者の声がした。猿ぐつわをされているにもかかわらず彼の口はふさがれることはなかった。
「この会場を乗っ取ったというのなら、正々堂々とクイズで勝負してもらうのはどうですか?」
「何だって?!」
司会者の提案に残りのものがどよめいた。
「このクイズには10人の解答者が出場します。このうちの誰か1人でも全問正解したら、無条件で諦めてもらいます。10人とも全問正解できなかったら、あなたの要求を呑むというのはいかがですか?」

「そんな無茶な!」
「クイズ番組で国の将来を決めるなんて言語道断だ!」
議員からのブーイングが飛び交った。その時、総理が毅然とした態度でTVに映っているバレンタインに言った。
「分かった…その提案、受け入れる!」
「なるほど、用件はわかった。では、最初の挑戦者は誰だ!」
「私が出よう!言いだしっぺが出ないわけには行かない。それにこれは日本の将来がかかっているのだ!」
「えええええ〜〜〜〜〜っ?!!」
総理の発言に議員は慌てふためいた。必死になって止めようとしたが、総理は頑として聞き入れなかった。彼等は一瞬思った。この人に日本の将来を任せていいのだろうか…と。
「私以外の9人はこの番組のルールに則り、筆記試験の上位9人から選ぶ!」
「は、はあ…」
総理とこの案を出した司会者以外は乗り気ではなかった。
(この人はクイズ番組に出たい『だけ』なのでは…)
しかし、そんなことを言っている場合ではない。総理のプライド…だけでなく国の未来を左右する戦いが今始まろうとしていた。

総理が車でミリオネアの会場へ向かう途中、警察の検問に止められた。
「君たち!道をあけたまえ!私は急いでいるんだ!」
「すみません、只今検問中なので」
「何を 悠長なことを言っているんだ!国の一大事なんだぞ!このままだと、ワルワル団の思う壺だぞ!」
「ふふふふ…」
「嫌だ!俺はまだ選挙権がないんだ!未成年の俺が、何でこんな大事に首突っ込まなければいけないんだよ!」
人志はワルワル団が『ミリオネア』の会場を乗っ取ったニュースを見て、すっかり怖気づいていた。滸泉神にすぐ目ン玉を返し、一目散に逃げたい気分だった。だが、エルとルビが目の前でにらみつけている。
「ひとしさん!明日の日本を担う若者がそんなこと言ってどうするんですか!投票率の低下を食い止めるのはあなたですよ!」
自分は日本の将来まで考えるほど殊勝な人間ではない…と人志は一瞬思ったが、ルビが例の一言を放った。
「ひとし、変身だ!」
「ええい、ちくしょう!やってやろうじゃねえかよ!The death,be reborn!」
人志の変身用腕時計が輝いた。

なんと!検問の警官のみならず、トラックの運転手までワルワル団だった!
「お前たちは!」
「総理、あんたはミリオネア会場には行けん、日本の最期をその目で、じっくり眺めるんだな。」
ワルワル団の戦闘員が総理を拘束しようといわんばかりに迫ってきたその時だった…。
ヒュウウウウウ…
「ん?」
「うわーっ!お、落ちるーっ!」
「ぎゃああああ!!」
ドシーン!ズン、ズシンッ!
空から変身した人志が戦闘員に向かって落ちてきた。そして、猫型宇宙人の風船猫・タマと透明猫・レスが次々と落ちてきて戦闘員は全員気絶してしまった。
「君達は?」
総理は突然のことに驚き、人志らに声をかけた。
「総理、僕たちも会場まで行きます!今のうちに行きましょう!」
「あなたが『わらじ大臣』なの?」
タマが総理を見てボケをかました。
「それはぞうり、もとい、総理大臣だ…急げ!」
レスが静かに突っ込んだ。
「さぁ、早く乗るんだ!」
総理に促され、人志達は総理の車に乗り込み、会場に向かった。