「クイズの道は険し!」その13「最後の戦い」

爆弾のキャッチボール

ケムゾウが手にしているのは、ジュラルミンケース内の時限爆弾であった!!
「おのれ、ケムマキ!いつの間に!?」
「へへへ、そこにいる茶髪の兄ちゃんの機転でね、お前達が会場に持ち込んだ時限爆弾を爆発させないように先手を打ったのさ」
「ムムム!!小癪なマネを!!」
バレンタインがケムゾウに飛び掛ってくると、ケムゾウは透かさず爆弾をケムシに投げ渡した。
「そら、ケムシ!!」
「オーライ!!」
バレンタインがケムシの方に行くと、ケムシは今度は童馬に爆弾を投げ渡した。
「童馬兄ちゃん!!」
「OK!!」
ここからは、もう殆ど団体キャッチボールである。
「行くぞ、国生!!」「はいな!それ、タマちゃーん!!」「はーい♪アオハルさーん♪」「青春だなー!明ー!!」「よっしゃー!夕 樹!!」「任せな!オッサーン!!」「ひえーっ!そんな物騒な物、押し付けれちゃ困るざます!!坊ちゃーん!!」「お前は主人に 物騒な物を押し付けるのか?この際まあ良いが…それ!ケムマキとやら!!」

次々と一同の間を飛んでいく爆弾に翻弄され、バレンタインはアタフタと駆け回った。危ない、危ない。爆弾が落っこちでもしたらど うするのだろう…(汗)。

ミゼットガンをシャドーマンに撃ち込むフォース

一方、こちらは巨大戦。
「喰らえ!ミゼットガン!」バキューン!
「ぎゃああああああああ!」
ズドオオオオオ…
ミゼットガンの弾を食らったシャドーマンは白い煙をあげながら悲鳴を上げた。だが、彼の体には傷ひとつ見当たらないのだ。
「はははは…俺の体は影で出来ている…よって傷をつけることはできない!いくら俺の体にでかい弾を撃ち込もうとも致命傷を与えるこ とは出来ない!」
「何っ?」
シャドーマンの言葉にフォースは驚愕した。

幸薄そうな、いや、カゲウスイが現れた。

「そういうことか!」
「誰だ!貴様!」
「俺はカゲウスイ!」
「フン、お前もこの俺にかすり傷一つ、負わせられまい!」
「そいつはどうかな?」

人志の影に入り、パンチをシャドーマンにお見舞いするカゲウスイ。

「とおおおおお!」
「くそー!どこへ消えた!?」
「あっ!さっきの影の人…」
なんと!カゲウスイはジャイアント人志の影になっていた。
「いくぞ!カゲウスイパアアアアンチ!」
「フン、そんなもの当らん!」と思ったが
ガアアアアアアアン!
「ぐわあああ!何故だ?俺の体は影で出来ているのに…」
「ハハハハ!教えてやろう。俺が影になることで、お前と同じ影になる、つまり俺にはお前の影の術が通用しない!」
「おのれ?!」

心強い味方が現れた人志はカゲウスイにお礼を述べた。
「ありがとうございます、サチウスイさん!」
ズルッ
カゲウスイは影の状態でずっこけるポーズをとった。
「いやな間違え方だな!」
「すいません…でも、これでシャドーマンと互角に戦える…」

「では、行くぞ!!」
こうして、カゲウスイとシャドーマンの一騎打ちが始まった。格闘の腕前は双方ほぼ互角で、鮮やかな技の応酬が続いた。そうして戦 うカゲウスイに、ジャンボ人志は声援を送った。
「ウスイカゲさん、頑張れ!!そんな影野郎に負けるな!!」
「やれやれ。オレ達にできるのは応援だけか…結局のところ、お前の巨大化ってあの影の薄いお兄さんに影男と対等に戦える大きさの 体を提供しただけのようだな…」
「良いじゃねえか。こうやってお役に立てたんだから」
「2人共、そんな事言い合ってる場合じゃありません!!」
能天気な人志とルビの遣り取りに、エルがイライラしながら言った。
「このまま実体の無いものと戦っていても、ラチが明きませんよ。この世に実体の無い生命体が存在する筈が無いですから、何処かにあ の影男を作り出している『元』が隠れているに違いありません。それを探し出すんです」
「なるほど…でも、この広い町中の何処を探せば良いんだよ…(汗)」
町を見回しながら途方に暮れる人志であった。

テレビ局からやや離れた建物の陰――今や人がテレビ局の周りに密集している為、周囲には人っ子1人いなくなっている状態のその場 所に、その男はいた。
そのコート姿の男は、何と!今、カゲウスイと戦っている筈のシャドーマン!?
「ふっふっふっふ、バカな奴め。今お前と戦っているのは、オレが念力で作り出している分身だ。本体であるオレを倒さない限り、そ の分身は永遠に不滅。戦い疲れて体力が落ちてきた時が、お前の最期だ…!!」

シャドーマンは遠いところから巨大な影を操っていた。

「おーい、タマー!!困った奴だ。あの騒ぎの中、一体どこへ行ったんだ?」
同じ頃、タマとはぐれたレスが会場内でタマを探し回っていた。舞台裏が何やら騒がしいので行ってみると、ケムゾウ達が解答者達が キャッチボールをして遊んでいた。その中央ではバレンタインが『ボール』を追ってアタフタ走り回っている。良く見ると、タマも一 緒にキャッチボールを楽しんでいた。
「あいつら、何やってるんだ?こんな非常時に…。おーい、タマ!!」
「あ、レス!はーい♪」
タマが投げてきた『ボール』を、レスは何気無しに受け取った…が、それはボールでは無く何やら四角い機械だった。
「…???何だ、これは?」
「時限爆弾だよ。このヘビメタのおじさんが、それで会場を爆発させようとしたの」
「どわああああっっ!!そんなモン投げ渡して くるなーーーーっっ!!」

時限爆弾を見て狼狽するレス。

すっかりパニック状態に陥ったレスは、爆弾を待ったまま大慌てで外へ向かって駆け出した。
「ダメだよ、レスー!!ちゃんとみんなに投げ渡さないと!」
「事情の分らん者を引き込むんじゃねえよ(汗)。とにかく、みんな!早くレスを追おう!」
一同はレスの後を追った。

「ぎゃあああああああ!!」
いつもの冷静なレスは何処へ行ったのか、レスは爆弾を持ったまま同じところを何度もぐるぐると回っていた。
カッチ、カッチ、カッチ…
そうやっている間にも時限爆弾の時間は確実にすすんでいる。タマは爆弾を指差しながら、レスに指示をした。
「レス!瞬間移動!はやく、何処かにやって!」
「あ、ば、ば、爆弾よ、痛いの痛いの飛んでいけ!」
シュバッ!
レスがでたらめの呪文を唱えると爆弾はいずこに消えてしまった。
「ふうっ、助かった…レス、爆弾はどこへやったの?」
「えっ?」
「えっ、て…分からないの?」
「とっさの事だから場所をイメージするのを忘れていた!」
「何ーっ!」

攻撃力はあるが実体の無い巨大シャドーマンとの戦いで、カゲウスイも次第に息が上がってきた。
「ふっふっふっふ、もうそろそろ体力が落ちてきたな。では、このまま一気に…」
建物の陰でほくそ笑むシャドーマンの本体だったが、その時、彼の後ろで何かが落ちる音がした。
カターン!
「ん?何だ?」
シャドーマンが物音に振り向き、落ちてきた物を拾ってみると、何とそれはレスが瞬間移動させた時限爆弾――

爆発し、消滅したシャドーマン

ちょうど爆発の時間が来たらしく、時限爆弾は大爆発を起こした。
「何だ!?何が起きたんだ!?」
戦っている傍らで突如起 こった爆発にカゲウスイ、フォース、そして人志はその方に目をやったが、それと同時に巨大シャドーマン の姿もその場から消えてしまった。
「あそこか、レスが爆弾を飛ばしたのは!」
「でも、影男も消えちゃったよ。どうなってんの?」
爆弾を探しに外へ出てきたケムゾウ達もそれを目撃して不思議がったが、夕樹がふと思いついたように言った。
「そうか…さっきまで暴れていた影男は文字通りの『影』だったんだ!きっと本体は爆発の起きた場所にいたに違いない!」
「操っていた本体が吹き飛んだから、あのデカい奴も消えたのか…人志さーん、お巡りさーん!!影男はやっつけたよー!!後は敵の 親玉とザコを片付けるだけだー!!」
ケムゾウは、人志とフォースに向かって叫んだ。
「そうか!ありがとう、ケムマキくん!!」
「ムム…おのれ〜!切り札をすべて失ったか…!!」
恨みがましく一同を見据えるバレンタイン、フラワー児童、ザコ軍団に向けて、フォースミゼットロボはミゼットガンを突き付けた。< BR>

「お前達も年貢の納め時だな。さあ、大人しくお縄に付け!!」
ところがバレンタインは少しも慌てず、
「ふっふっふっふ…我々はまだ捕まる訳にはいかんのだ。必ずまたお目に掛かろう!」
そう言った途端、バレンタインを始めワルワル団一同はその場から跡形も無く消え去った。
「しまった、瞬間移動か!!」
「くそ〜っ!ワシのマネをしおって!!」
レスが忌々しげに言った。ケムゾウ達も闘志をあらわに誓うのであった。
『ワルワル団め、今にみんなやっつけてやるぞ…!!』

レスが飛ばした爆弾が爆発した場所は広い路上の十字路の上だったのが幸いして、周囲の建物にそれほど大きな被害は無く、辺りに人 がいなかったので怪我人も出なかった。
「本当にありがとうございました。皆さんのお陰で、日本の郵政は守られました」
総理はフォース、カゲウスイ、そしてケムゾウ達に礼を述べた。人志も『元に戻る牛乳』を飲んで元の大きさに戻っていた。
「いえ、ボク達は当然の事をしただけです」
「では、我々はこれで…」
それだけ言うと、フォースとカゲウスイはその場を去って行った。だが、ケムゾウだけはカゲウスイを見ながら不思議そうな顔をして いた。
「どうした?ケムゾウ」
「…あの影のお兄さん、確か以前、夢の中で見たような?気のせいかな?」


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