邪魔者・ワルワル団は去り、人志はいよいよ最後の問題に挑戦しようとしていた。この問題さえ正解すれば、念願の1000万円を手に入 れる事ができるのである。
「では、最後の問題です。日本初のカラー映画『カルメン故郷に帰る』が上映された年は昭和何年でしょうか?A.25年、B.26年、C.27年、 D.28年…」
この最後の問題に、人志はさすがに考え悩んだ。
『弱ったなあ…今までライフラインも使わずにここまで来たが、フィフティー・フィフティーでも答えが絞れそうに無いし、テレフlォンで父さん達に聞いても果たして知っているかどうか…』
その時、人志の脳内に誰かが語り掛けてきた。
『人志さん、1人で悩んではいけないです。この幸運はみんなの力で勝ち取るんです』
「その声は、滸泉神!」
そう。その声の主は、人志に幸運の目玉を預けた不思議な少年・滸泉神。彼は陰ながら密かに人志を見守っていたのである。
「みんなの力…そうか!会場にいるOBの人達は、その映画を見た記憶があるかもしれない!済みません、 ライフライン使います!オーディエンスで!」
オーディエンスの殆どはBに集中していた。会場では『あすなろ』のOB達が自信たっぷりの表情をしていた。
「覚えている。あの映画はワシらの若い頃、大きな話題になった映画じゃからのう…」
「私はしっかり見に行きましたわ」
「(それでは皆さんを信じて…)答えはB!!昭和26年!!」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー!!」
人志は祈るような気持ちで司会者の返答を待った…。
「正解!!おめでとうございます!!1000万円獲得です!!」
「やったな!ひとし!!」
「おめでとうございます!!」
信じられないといった表情の人志を、エルとルビは口々に褒めた。
「やったぜ!!人志さーん!!」
「人志くん!!よくやった!!」
会場内のケムゾウ達一同、潔、茂、『あすなろ』のOB達も大歓声を上げている。テレビを見ていた『あすなろ』の子供達も大喜びだっ た。
「先生!人志兄ちゃん、1000万円取ったよ!!」
「これで『あすなろ』もなくならずに済むね!!」
「人志ちゃん…ありがとう…」
輝子は目を潤ませながら、人志に感謝した。
会場の外で、1000万円の小切手を手にした人志はケムゾウ達やOB一同に囲まれていた。
「皆さん、ありがとうございます。お陰でオレは1000万円を取る事ができました」
「何を言うんだね。すべてはキミの努力の結果だよ」
「でも、あきらちゃん達。ワルワル団のせいでクイズがダメになって残念だね」
明、アオハル、夕樹、ドラキュラ男に向かって明菜が気の毒そうに言うと、明は気にするなとばかりに爽やかに言った。
「なーに。オレ達はまた、いつでも挑戦できるよ(その時は、今度こそ足を洗って男になるぞ)」
するとそこへ、小池と太宰が割り込んで来た。
「本当に、あのクイズは惜しい事をしましたなあ」
「まったく。世の中には悪い連中もいたものですなあ」
『アンタらは自分で勝手に落ちたんだろーが…(汗)』
調子の良いダメ担任達を、ケムゾウと童馬はジト目で見つめた。そこへ例の総理も現れて、人志の事を褒め称えた。
「おめでとう、人志くん!見事、自分の生家の為に1000万円を獲得したね。宇宙にいるキミの本当のご両親も、きっとどこかで見ていて 喜んでいるはずだ」
「あのー…オレ、別に宇宙人じゃ無いんですけど…(汗)」
迎えに来た護衛の厳重な警備の中、首相官邸に帰って行く総理を見送りながら一同は思った。あの人に日本を任せて大丈夫だろうか…?
「では、人志くん。これから早速『あすなろ』へ行って、みんなを喜ばせてやろう」
「久々に輝子さんとも話をしたいし…」
ケムゾウ達と別れ、人志はOB達や潔、茂と共に『あすなろ』へ向かった。人志は懐の幸運の目玉に手をやり、例の赤い瞳の少年に感謝 した。
『滸泉神…どうもありがとう…』
「この店のスパゲッティ一度食べたかったんです…雑誌にも書かれていない穴場なんです…」
クイズ番組から数日後、滸泉神にお礼をするために人志は小さなレストランにいた。彼の大好物のたらこスパゲティが大盛りで出され ている。
「ああ、お金は気にしなくていいから…」
「じゃあ、遠慮なく…いただきます」
人志がミリオネアに出場した後テレビ局に『あすなろ』についての問い合わせの電話が殺到した。『あすなろ』の存続を望む人たちの 署名が数百万人分も集まったのだ。これについて国会でも取上げられ、総理は『あすなろ』などの孤児院に対する援助についての法案 の検討をすると発表した。
「『あすなろ』を潰そうとした悪徳金融業者がワルワル団と関係があったらしいって言ってましたね…」
エルが滸泉神の食べっぷりを感心しながら見ていた。
「ああ。思えば『あすなろ』は、オレのとばっちりを受けていたのかもしれないな」
「そうかもしれませんね。ひとしさんはワルワル団と戦う勇者の1人ですから」
「先生にもみんなにも悪い事したな…」
「でも、ひとしさんは愛する『我が家』を守り抜いたんですから良いじゃないですか。これからも悪の手から愛する者を守っていきまし ょう」
男性の言葉に輝子は微笑んだ。
「実は先日、職安に求人票を出して…なんでも今日、こちらに面接にひとり来るらしいのよ。」
「それは楽しみですね…」
2人が話していると背後から誰かの声がした。
輝子達の前に現れたのは、何とブラック神様だった!
「なんと怪しげな風貌!院長先生、わしを採用してください!」
ブラック神様の後を追いかけるようにゴキブリライダー、いや、仮面ライダーゾロが現れた。
「あんたも人のことが言えるのか!頭の触覚が思い切り怪しいじゃないか!」
「何を!人は見かけで判断してはいけないと親に言われなかったのか!」
「まあ、落着いて…とにかく中にお入りください」
輝子は駄々をこねた子供をなだめる母親のように孤児院の中に案内した。父から受け継いで以来、ひとりで守ってきた孤児院もにぎや かになりそうだった。
ようやく完成しました。これをやっている間に「クイズ$ミリオネア」では政治家大会が実現し、某総理の任期の終了まであと僅かとなってしまいました(汗)あまりにも遅筆な管理人に付き合ってくださったA-chanさん、オーレさん、友斗さんに感謝を申し上げます。この話は最初は「天地の戦士」のオリジナルの小説で構想していた話のひとつでした。人志と孤児院『あすなろ』と絡んだ話を 漠然と考えていました。紆余曲折の末、合作でこの話を書くことができよかった と思っています。
次回はこれも私が構想していた話になります。若い頃の神様のお話です。
今は便利屋の神様であるが、かつては役場に勤めていた公務員であった。この頃はあまりにも多忙で子供と接することが出来なかっ た…。そんな父の姿を見守っていた息子のウェットティッシュであるが、寂しさを募らせていた。
彼の誕生日に父と遊ぶ約束だったが事情で出来なくなってしまう。ウェットティッシュは自分の誕生日を忘れたのだと思い込み、家出をしてしまう。その時、彼が無意識で呼び寄せた竜が現れた…次回、「竜の目の涙」お楽しみ。
(タイトル、内容は変更になる場合があります)