「皆さん!行きますよ!!」
ヘンリーの合図と共に、皆は気を放出した。ヘンリーの魔法によって高められた気が、ひょうたんの内部で一気に膨れ上がった。
「な、何だ!?オレの腹の中で妖精どもの気の高まりを感じる…」
自分の体の異変に、ひょうたんは驚きの声を上げた。
魔法によって無理に引き上げられた気は、皆の体にも負担を与えていた。
「皆さん、頑張って下さい!ここから脱出するには、これしか方法が無いんです!!」
「ううっ…うっ、うっ…」
「くっ、苦しい……」
「ハラヒレホロハレ、ハラヒレホロハレ……☆★☆★」
呻き声まで、マイペースなはってむである(汗)。
ドカーーーーーーン!!
ついに、ひょうたんの腹が破れた!!
「ぎゃあああああああっっ!!」
ひょうたんの断末魔の声が響いた。
気が付くと、皆は先程ひょうたんが眠っていた部屋に投げ出されていた。
「みんな無事か!?」
「ボク達、出られたんだね!」
「イヤッホーーーーッ!!」
「でも、何だか妖精さん達の数が増えてませんか?」
フレイヤが不思議そうに言うと、レスが答えた。
「きっと、酒にされていた妖精達が、ひょうたんの死によって元に戻ったんだろう……」
「ちょっと待って。これ…」
マサボーが拾い上げたのは、震えながら泣いている小さなひょうたんだった。
「痛イヨ〜〜〜…助ケテ〜〜〜…」
「可哀想に。すぐ直してあげるよ」
「やめておけ、ヘンリー!こ奴はワシらを酒にしようとした奴だぞ!!」
「大丈夫だよ、はってむさん。魔力が破れた以上、彼はもうただのひょうたんさ」
ヘンリーが呪文を唱えると、ひょうたんの傷はみるみる塞がった。ひょうたんは、ヘンリーに礼を言った。
「ありがとうございます。私は妖精界きっての落ちこぼれで、やる事なす事失敗ばかり。お陰で友達ができないからヤケを起こしてたんです。本当は寂しいんです」
「そうか、キミも一人ぼっちだったんだね…でも大丈夫だよ、キミにはもうこんなに友達がいるんだから」
「ありがとうございます、ナイトメア様!!」
ナイトメアとひょうたんは、しっかりと抱き合った。
「美しい友情の姿、絵になるのう…」
はってむが貰い泣きして言った。
皆が城の外に出ると、例の気味の悪い棘の森は無くなっていた。代わりに綺麗な花園が一面に広がっていた。
「あ、花園の中を道が通じてますよ」
「これを通れば帰れる訳だな」
ケムケムの父親が、ヘンリーに礼を言った。
「ありがとうございます。あなたのお陰で私達は助かりました」
「お礼ならケムケムに言ってやって下さい。彼がボクをこの世界に呼ばなかったら、皆さん方は救われなかったでしょうから」
「結果論かもしれないけど、悪戯も時には役に立つ時もあるって事だね」
ヘンリーに続けて人志が言うと、父親はケムケムの頭を撫でながら息子に言った。
「さっきは済まなかったな…痛かったか?」
「ううん。へっちゃらだい!」
ケムケムは元気に笑いながら答えた。マサボーも先程から父親と戯れている。その微笑ましい図を見ながら人志は思った。
(良いなあ、親子って…)
「では、あなたを元の世界へ戻しましょう」
ケムケムの父親の指先が輝くと、空間に光る青い穴ができた。
「あなたの世界の事を念じながらその穴を通れば、必ずその世界に戻れる筈です」
「さようなら、ヘンリー。短い間だったけど、キミと出会えて楽しかったよ」
「さようなら、人志くん。さようなら、みんな。この恩は忘れないよ」
「さようならーーーーー!!」
皆に見送られながら、ヘンリーは穴を通って元の世界に帰って行った。
「さあ、オレ達も帰るとするか」
「ワシも家で一眠りしたいワイ」
ケムケムの案内で、一同は再び元来た道のりを歩いて戻って行ったが、その間中、人志は考えていた。
(ケムケムと言い、親父さんと言い、あのマサボーと言い、みんな誰かに似てるような…まあ、他人の空似だろうけど)
明日から本格的に夏休みになる、今年の休みはもっと父さん(人志の養父)と話をしようと思った。
このたびは合作に参加して下さった、ふくやま様、A-chan様、オーレ様、もっき〜様、どうも有り難う御座いました。
後半からは学校などの都合でほとんど参加できませんでしたが皆様のおかげでやっと完結しました。
こんなに続いたのも皆様のお陰です。
本当に有り難う御座いました。
2004年11月12日 友斗
物語の終わりに友斗さんが書き込みをされていたので、この書き込みをあとがきに変えてこの物語を終わります。
ありがとうございました。