「エビとキザと坊主と」その1

ロブスター、現る

連休も終わり、確実に季節は夏へと向かっていた。ある日のことだった。
猫型宇宙人たちは涼むためにサンダーの家に遊びに来ていた。
彼らはサンダーの部屋の障子を開け、そこから見える庭を眺めていた。
「サンダーの庭は広いな〜!」
「おいおい、珍しいものではないだろう」
ここの家の庭は100ヘクタールはくだらないというだだっ広い庭である。

突如、その静寂は破られた。大きな庭の池から何者かが現れたのだ。
ブクブクブクブク…ザアアアア…
「ふははは俺はワルワル団のロブスター!このサイトの海は俺の海だ!」

「誰だよ…俺ん家の庭の池で遊んでいる奴は??」
「あ、おいしそうなエビ」
タマがロブスターを見て声を上げた。
「アホか!ありゃあ、ザリガニだ!エビは海にいるんだろう!」
サンダーがすかさず突っ込みを入れた。

「タマの言うことも間違ってはおらんと思うが。突然変異で大きくなったのかもしれん…。いや、ひょっとしてイセエビがどっかの魚屋のトラックから逃げ出したかもしれん」
レスが変な推理を述べた。
「それって『風が吹けば桶屋が儲かる』ですか?」
フレイヤがレスに聞いた。
「ちょっと違うぞ…」
ケインが胡散臭そうにロブスターの方を眺めた。

ロブスターを見て驚く、十文字。

ロブスターが出現して騒いでたとき、サンダーの家庭教師であり、サンダーの父、雷猫一族長のお付でもある十文字がやってきた。
「ぼっちゃん、どうされました…あっ、お前は誰だ!何奴?ザリガニの格好をして怪しい奴!」
(池から出現している時点で既に怪しいと思うが…十文字よ)
サンダーは心の中で突っ込んだ。


仮面ライダーキザ、参上!イルカに乗り、バラを持つキザ。

その時、向こうから、男の歌声が聞こえてきた。
タマたちは呆気に取られた。
ザアアアアア…
池なのに波の音が聞こえてきた。

イルカに〜の〜ったキザが来た〜♪仮面ライダーキザがイルカにのってきた〜♪
「貴様!何者だ!?」
イルカにのったキザは見事なバランスでイルカに乗ったまま、くるりと向きを変えた。
「はっはっは仮面ライダーキザ!ロブスター!福禄堂本舗の美しい海を荒らすのは…よせよ☆」

「ねぇ、池なのになんでイルカがいるの?」
タマがサンダーに聞いた。
「知るかよ!」
「サンダーのうちの池は東京ドームぐらいあるそうだ…だからイルカやサメがうようよ泳いでるらしい…」
「サメもいない!それに東京ドームはでかすぎるぞ!」

「おじさん!僕もイルカにのせてよ!」
タマがキザに声を掛けた。
「おっ、おじさん?そんなセリフは…よせよ☆」 「タマ!お前は遊ぶことしか頭にないのか!」
「遊ぶって言ってないよ!乗るんだよ!」
「屁理屈いうな!」

「こら、猫ガキ!!キザの事をオジサンなんて言うな!!」
後ろから女性の鋭い声が聞こえた。
「ツバサ!いつの間に!?」
キザにツバサと呼ばれた女性は、黄色い歌手のような服装で仁王立ちしていた。

「あ!派手な服のお姉さん!」
タマがツバサを指差して叫んだ。
「知り合いか?タマ」
ケインが不思議そうな顔をして、彼女を見た。
「ああ、前に『なまず男』(「作品集」の「ゴンズイ男、現る」をご参照ください)が現れたときにやっつけてくれたんだよ」
レスが説明した。
「派手な服は余計だけど…まあいいや、あたしは海上ツバサだよ。どこかで見たことがあると思ったら、あんたたちだったのね」

「ところでキザさんとはどういう関係ですか?」
フレイヤが何気なく聞いた。
「いやだ!あんた!関係って!」
バシッ
フレイヤの背中をツバサは思い切りたたいた。
「…」
フレイヤは呆気に取られた。


対峙するロブスターとキザ。向こうにはイルカにのるサンダー。

「キザ!我らワルワル団に盾突くとは愚か者め!」
「ロブスター!これ以上の悪行は…よせよ☆」
ロブスターとキザは池から庭に下り、対峙した。

「サンダー、いいな〜、僕も早く乗りたーい」
何だかんだといいながら、猫型宇宙人たちはキザからイルカを借りて池で遊んでいた。
「ねぇねぇ、早く〜」
「ジャンケンで決めたんだろうが!お前がゲット(管理人註…管理人の住む土地の方言で『ビリ』という意味です。)やろうが!」
「そういいながら結構楽しそうだな」
ケインは皮肉を漏らした。

一方、キザとロブスターは
「ケケケケ、キザ、面白いものを見せてやろう!」
「…?」
「こら、あんた達!静かにしな!」
「わーっ」
ツバサはイルカで遊んでいる猫達を叱った。

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