「どうする!?操作はどうやってやるんだ?」
ケムマキは童馬に声を掛けた。
「実はこのロボット動かしたの今日が初めてなんだ…でも、一か八かやるしかねえ!」
なんてことを言ってくれるんだ、…大丈夫なのか? 君達?
「まず最初はオレが操縦する。何しろこいつを動かすのは今日が初めてだからな。上手く動かせるかどうか解からねえ」
「何だ、このロボットは操縦者の動きに合わせて動けるんじゃなかったのか?」
「でもまだテストした訳じゃないからな……」
「何だよ兄ちゃん!!そんな中途半端な物にオレ達を乗せたのか!?」
「仕方ないだろ!急場だったんだから!!とにかく、こいつに乗り込んだ以上みんなオレに命を預けろ!!」
「おー、可愛い顔に似合わず何とも凄いセリフだ、童馬ちゃん!!」
明菜が童馬を茶化した。
「オレをちゃん付けで呼ぶな!!」
その時、コクピットの通信機のブザーが鳴った。童馬がスイッチを入れると童馬の祖父であり、チャイルドXの製作者である芥川博士の声がした。
「童馬!危ないマネは止せ!!そのチャイルドXは遊園地に寄贈する為に造った物で武器は付けてないんだぞ!!早く戻って来い!!」
「ジイちゃん!ここで逃げたら男がすたるぜ!!オレの事なら心配ねえ、イザという時はこいつらだっているし……」
「そうだよ、博士!オレ達だっているんだから!」
「みんな運命共同体だもんな!」
「任せとけって,おジ〜〜〜〜〜イちゃん♪」
残りのものは皆口々に博士に向かって叫んだ。
「うわっ!!危ねえ!!」
童馬は思わずコクピットでジャンプした。すると、その動きに合わせてチャイルドXもジャンプした。
バキッ!!
チャイルドXの後ろの岩が、カワラーの蹴りを喰らって粉々に砕けた。
「やった!!間一髪逃げ延びたぜ!!どうも思い通りに動くようだな。よーし、このまま一気に行くぜ!!」
「ナマイキな!!そんなチンケなロボットでオレ様に勝てると思ってるのか!?」
カワラーは次々に突きや蹴りを入れてきたが、今や童馬と同等の力を持つチャイルドXは、素晴らしいフットワークで難無くそれを避けた。
「ゼイ、ゼイ、ゼイ…」
カワラーの息が上がってきた。
「しめた!!奴め、くたびれてきたぞ。芥川、今度はオレにやらせてくれ」
「OK!!任せるぜ、ケムゾウ」
操縦を童馬と交代したケムマキは目を輝かせた。
「俺の本領を見せてやるぜ!いくぜ、甲賀流忍法!」
ガッキーン!!
ケムマキ操るチャイルドXはカワラーと組み合う形となった。
「ハハハハ、この俺に接近戦で挑むとは!なんて無謀な!」
「それはどうかな?」
「何?」
「ん?お爺さんは誰?」
タマが、いつの間にか自分達の側に来て立っている、一人の老人に気が付き声を掛けた。
「ああ、紹介が遅れたね。ワシは童馬の祖父の芥川隆之介だよ。孫達が心配で、ここに駆け付けて来たんだ」
「それじゃあ、お爺さんは童馬くんのお祖父さんなんだね」
「ややこしいなあ…」
透明猫・レスがニヤニヤと笑った。
「大丈夫ですよ、お祖父さん。童馬くんにはケムゾウくんやケムシくん達がついてるんですから」
「だから心配なんじゃよ……」
(ハッキリ言うジイさんだなあ、あのガキどもが聞いたら怒るぜ)
博士の言葉にサンダーは心の中で突っ込んだ。
「おい見ろよ!あのロボット、何か技を掛けてるぞ」
ケインの声に一同はいっせいに2人を見た。
「あっ!あれは!!」
さてチャイルドXの技とは!?
チャイルドXはカワラーを抱え空高くジャンプした
「行くぞ!!甲賀忍法・垂直跳び!!とぉ〜〜〜〜〜〜っ!!」
ケムゾウがコクピット内でジャンプすると、チャイルドXもそれに合わせてジャンプした。さすが、甲賀忍者ケムマキケムゾウの力を持ったチャイルドX!!カワラーを抱えたまま数十メートルの高さに飛び上がった……が!!
ズゴシッッ!!
ケムゾウの足に取り付けた操縦機のコードの長さが、ケムゾウのジャンプの高さに着いて行かず、哀れケムゾウはコードに足を取られコクピットの床に尻餅をついた。
「あいたたたた……!!」
「何だよ兄貴、締まらねえなあ」
「芥川!!このコード短過ぎるぞ!!もっと長いのに付け替えろ!!」
「バカ野郎、イチイチお前のジャンプ力に合わせてられるか!第一、垂直跳びのどこが忍法だ?」
「ホント、そのまーんまだぜ。ケムゾウちゃん」
「うるせえ!!いらん事に突っ込み入れるな!!それから国生、頼むからオレの事もちゃん付けで呼ぶなよ……!!」
一回のジャンプの間に随分と長い遣り取りだが、それよりフィニッシュはどうなる!?
「ぬわああああああ!」
チャイルドXは空中でカワラーを投げ飛ばした
「受けろ!!甲賀忍法・空中逆落としーーーーーっっ!!」
「ぎゃああああああーーーーーーーっっ!!!!」
ドゴォォッッ!!
空中から投げ落とされたカワラーは、モロに地面に叩き付けられた。真っ逆さまに落ちたカワラーは、頭が地面にめり込んでいた。
「ははははは!!見たか、オレの必殺忍法!!」
「スゴイや!兄貴!!」
「いつからあんな技を?」
「いつもプロレス見て研究してるからな、甲賀忍法に我流を取り入れてるのさ!」
「ありゃあ、忍法と言うより格闘技だぜ。お前、ただの格闘オタクじゃねえのか?」
「うるせえなあ、だから突っ込みを入れてくれるなって……」
そうしている内に、カワラーが地面から頭を抜いて起き上がりそうである。
「兄貴!!あいつ、起き上がりそうだぜ!!」
「よし!止めだ!!最後はみんなでやろう!!」
「さすがケムゾウちゃん!オレ達にもやらせてくれるなんて気が利くねえ!!」
「ちゃん付けで呼ぶなっっ!!」
相変わらず、明菜は口が悪い。
そのころ、下で2人の戦いを見守っていた人志達は…。
「あいつら、なんてむちゃくちゃなことを!お陰で地面に大きな穴が開いただろう!」
「博士…そういう問題か?」
サンダーは静かに突っ込んだ。
ゴゴゴゴゴゴゴ…
「グオオオオオオ…おのれぇ…!」
カワラーが地面から顔をようやく引っこ抜き、チャイルドXをにらみつけた。瓦の顔には無数のひびが入っていた。
「小僧ども!!よくも、よくも、オレ様の顔にヒビを入れてくれたな!!許さん!!ぶっ殺してやる〜〜〜〜っっ!!」
「バカめ!!オレ達は一人一人の力は小さくても、4人で100万倍の力になるんだ!!みんな、行くぞ!!」
「おうっ!!」
4人はコクピットで同時に手刀を振り下ろした。
「必殺!!4人で100万倍チョーーーーーップ!!」
バキッ!!
チャイルドXの手刀で、カワラーの頭の瓦は真っ二つに割れた。
「ぎゃあああああっっ!!参ったあああああっっ!!」
ドッカーーーーーーーン!!
カワラーは大爆発を起こした。
「やったーーーっ!!ケムゾウくん達の勝利だ!!」
人志たちはチャイルドXの勝利に歓声をあげた。
「みんな良くやった!やはり、ケムゾウくん達は頼りになる」
「何だよ、あいつらに任せるの心配じゃ無かったのかよ?」
「じいちゃん!やったぜ!」
童馬がチャイルドXの顔の部分から顔を出して、芥川博士に手を振っていた。
「ふう〜、一時はどうなるかと思ったが…よしっ、このチャイルドXを戦闘用に改造して自衛隊に送ろう!」
ズルッ
人志ほか一同は博士の言葉にずっこけた。
「じいさん!調子に乗るんじゃねぇ!」
「ねぇ、童馬くんのおじいさん、僕にこのロボット頂戴!」
「ロボットをどうするんだ」
「乗って遊ぶの!」
「お前は遊ぶことしか頭にないのか!」
「このチャイルドXはもともと遊戯用だったんだ…タマのいっていることは間違っておらんが…」
「ああ、やかましい!」
「やはりチャイルドXは遊園地に寄贈する事にするよ。もともとこのロボットは、子供達のおもちゃになるようにと思って造ったんだからね」
「でも、またワルワル団が攻めて来たら戦わなきゃならんぜ」
「なるべく、そうなって欲しく無いがな……」
博士がチャイルドXを眺めがなら、つぶやいた。
「タマくん、こいつに乗りたくなったら遊園地に遊びに来いよ。いつでも乗れるからさ」
「わーい♪ありがとう!!あれに乗っていっぱい遊ぶぞー♪」
「おいおい、調子に乗って遊園地壊すなよ!!」
「それじゃあ、オレ達は引き上げようか。博士も乗って下さい、一緒に帰りましょう」
童馬達はチャイルドXに乗り込み、夕日に向かって歩いていった。
「どうでも良いけど、オレ達が猫レンジャーだって?」
誰にも触れなかったことにサンダーは思わず言葉を漏らした。
カワラーが倒されて数日が経過した。
その後、チャイルドXは遊園地に寄贈され、子供に大人気のアトラクションとなった。
人志はチャイルドXのことが気になり、遊園地に遊びに来た。
人志は猫型宇宙人の姿を見かけると声を掛けた。
「あれ…君達は猫レンジャーの」
「猫レンジャーじゃない!」
「ちょうど、タマがあのチャイルドXに乗って遊んでいるところだ」
「…」
ズシン、ズシン、ズシン!
「わーっ、楽しい!」
「ずいぶんと楽しそうだな…」
「ああ、おかげさまでな…だけど、見ているこっちも恥ずかしくなるぜ…」
「おーい、レス、サンダー!一緒に乗ろう!」
「お客様、チャイルドXの利用時間は30分間です!」
こうして、遊園地はとてもにぎやかになったそうだ。